「はみ出しもの」のすすめ

このエントリーは、KLab Advent Calendar 2020の12/25 の記事です。 最終日の担当は取締役副会長の五十嵐です。

KLabのエンジニア社員によるAdvent Calendarのトリなのに、まさかの経営者によるエントリーです。すみません。

KLabの今と昔

今では経営という仕事をさせて頂いている私ですが、2003年のKLab入社時はエンジニアをしていました。今でも趣味の世界では技術書も読めばコーディングもする自分なので、技術に関する話をすることで生涯現役っぷりを社内にアピールしたいところ...なのですが、そんな独りよがりな話に需要はないと悟り早々に諦めることにしましたw

私の入社当時に比べると会社は大きく成長をしました。それに伴い組織・ルール・ワークフローなども昔とは比べ物にならないくらい整備・洗練されたように思います。職種やポジションごとの役割分担が進み、各人が自分の役割をしっかりとこなすことで、組織として最高のアウトプットを出そうとしている確かな実感があります。無論、まだまだ課題は多々あるのですが、昔に比べたらまるで別の会社のようです。そんな状況を作ってきてくれた全ての方々に感謝するばかりです。

言うまでもなく会社の成長や成熟は喜ばしいことです。しかし、社長だろうがアルバイトさんだろうが、エンジニアだろうが営業部門だろうが関係なく、皆が深夜、時には早朝までデバッグをしていたような時代と比べると、知らないうちにやりにくくなってしまったこともあるように思います。そして願わくば成長や成熟を喜ぶと同時に、こうした失ってしまったもの・欠けているものにも自覚的でありたいものです。

(先に断っておくと、ブラックな労働環境で働くことを推奨するつもりもなければ、気合・根性の類を語りたいわけでもありません。「楽するための苦労」以外の苦労は根絶すべきです。)

かつて、いわゆるスタートアップの1社だったKLabは未整備な物事で溢れていました。スタートアップの世界では「CEOはChief Everything Officerの略だ」などと言われていますが、まさにそんな状況だったろうと思います。

誰かがやったほうが良いこと、やってみたほうが良いことだらけの会社ですから、エンジニアがエンジニアの枠をはみ出して、色々な物事をHackすることに対して非常に寛容な空気があったように思います。

いや、寛容というよりも、未開の土地を見つけそこを勝手に開墾したら、その土地は自由にしていいような空気、始めたもの勝ち、やったもの勝ちとでも言ったほうが近いかもしれません。

自由で裁量が与えられている環境という言い方をしても嘘ではないと思いますし、誰もが「Everything Officer」性をもった仕事をやらざるを得ないカオスな環境という言い方もまた同様だと思います。

エンジニアの枠を飛び越えたチャレンジ

そのような環境ゆえ、エンジニアの枠を飛び越えた様々な挑戦が生まれていきました。エンジニアが(自らがやりたい仕事を獲得すべく)営業したり、(人月で評価されずに済む)ビジネスモデルを考えたり、(二度と似たようなものを開発しなくて済むよう)プロダクトを作って新規事業化したりといった取り組みが自然と生まれていったものです。

また、エンジニアとしての枠をはみ出したチャレンジをする人が身近にいると「こんなことやってもいいんだ」「自分にもできそう」という安心感や根拠のない自信が周囲にも生まれるためか、同様のチャレンジをする人が生まれやすかったように思います。

このような「良質な勘違い」をさせてくれる環境のお陰で、かくいう私自身も沢山の機会を得ることができたように思います。

元々私は自分でコントロールできないことが嫌いなタイプで、例えば自分がroot権限をもっていないシステムに身を預けたりするのが苦手です。そんな性分から、入社早々何の実績も信用もない身にもかかわらず「自分にもroot権限よこせ」とばかりにsysadmグループ(※)の一員に加えてもらえるよう当時のCTOの仙石さんにかけあうなんていう、図々しくも無謀なことをしたものでした(なんと即OKしてくれましたw)。

※社内の情報システムからお客様向けサービスのシステム管理までを一手に担うチーム。 仙石さんや、「[24時間365日] サーバ/インフラを支える技術」の著者をしている人をはじめ凄腕の人たちが集まっている怖...じゃなかった凄いチーム。

その後もこんな性分そのままに、「自分でやってみたい」「俺にやらせてくれ」などと出しゃばり図々しく生きてきました。当初はその対象がUNIXでありroot権限だったわけですが、いつしかそれが営業になり、事業になり、ついには経営になっていきました。動機はいつも同じで「人任せにせず自分でやってみたい」からだったように思います。

自分の話をしすぎたので話を戻します。

枠を飛び出すようなチャレンジをする人たちは、「技術以外の話も分かるエンジニア」へと早々に脱皮していきます。思考と試行を重ねる中で、異分野の知識を高速に吸収していきますし、立体的・横断的な思考をする習慣をみるみる獲得していく人が多いように思います。そしてその人の問題発見・解決能力が発揮される領域は技術以外にも広がっていくわけです(元KLabでコロプラを創業された馬場さんなどその最たる例と言えるでしょう)。

私は一人でも多くのエンジニアに「技術以外の話も分かるエンジニア」になってほしいと願っています。無論、技術の道を究めることを否定したいわけではありません。それはそれでとても素晴らしいことですし、正直に言えばある種とても羨ましいことでもあります。

ただ、自らの問題発見・解決能力を発揮する領域が広がる楽しさや、自分がコントロールできる物事が増えていく手ごたえは、技術の道を探求することにも負けない知的冒険なので、それをもっと多くのエンジニアに実感して欲しいと思っています。

「技術以外の話も分かるエンジニア」になるには

では何から始めたらいいのか?についても少し話をさせてください。

もしも貴方がかつてのKLabのようなカオスな環境にいるのなら話は簡単です。「未開の地」はいたるところにあるでしょうから、あとは好きな場所を開拓すれば良いだけです。組織のためになることであれば、多少の無茶はきっと許してもらえるんじゃないかと思います。これ以上の説明はきっと不要でしょう。

(無論、ただカオスなだけの環境であれば、そこに時間や労力を投じるのは良いアイデアではないでしょう。一所懸命に開拓したいと心から思えるようなカオスの中にいるのなら、それは本当に恵まれたことです。)

もし貴方が整備され秩序だった環境の中で仕事ができているのならそれはとても素晴らしいことです。誰にとっても未開の地といえるような場所は多くはないかもしれませんが、自分にとって未知の分野や機会はちょっと探せば沢山見つかるはずです。

とはいえ、役割分担が進み仕事のルールが整備された環境であればあるほど、未知への挑戦をするには結構な勇気ときっかけが必要となりがちです。また、秩序や合理性が大事にされる環境でしょうから、貴方の挑戦を許可する理由や建前、条件などが必要なこともあるかもしれません。

こうしたハードルをクリアするために意識すると良いポイントを列挙してみます。

  • 与えられた役割を120%こなす

    信頼の無い人に機会を与えようという話にはなりにくいのが世の常です。信頼される一番の早道は期待にしっかり応えて見せることです。その上で、期待の先に行くような仕事までできたらなお良いですね。

    与えられた仕事に真剣に取り組んでいなかったり、平凡なアウトプットしか出せていない人が言う「〇〇をやりたい」という言葉は人の心に響かないものです。

    「〇〇さんならやってくれそう」「〇〇さんがやって失敗するなら仕方ない」と思われるようになってしまえば、きっと好きなことにチャレンジする自由が手に入るはずです。

  • 発信をする

    そもそも良く知らない人に何かを任せようという話になるわけがありませんから、知名度の高さは大きなアドバンテージになります。また、情報は発信をする人にこそ集まります。どんな些細なことでも良いので、発表や発信をする習慣をつけると良いでしょう。

    人を唸らせるようなネタは必要ありません。たとえば失敗談を共有するだけでも大いに意義があると思います。とにかく定期的に発信をすることです。良い意味で好き勝手な仕事をすることを許されている人は、人一倍発信をしていることが多いです。

  • 手を挙げる/首を突っ込む

    役割をしっかりとこなし、発信する習慣が身に付いたら、きっと貴方の社内における「信用残高」は大いに膨らんでいるはずです。そうなったらこっちのものです。

    やりたいことや面白そうな機会があれば「自分にやらせてほしい」とどんどん手を挙げていきましょう。

    これといった機会が見つからなかったら違う場所に首を突っ込んでみるのも手です。面白そうな情報や人に接点が持てそうな場所(例えば特定のチームだったりミーティングだったり)があるなら、そこに自分も参加したいとアピールをしてもよいと思います。

  • 機会を得たらまた発信

    機会は有限のリソースです。機会という報酬をもらったらそれを独り占めしてはいけません。機会から得た知見はどんどんお裾分けをしましょう。挑戦結果を振り返り、学んだことをまとめて発信するのです。

    そうすれば貴方の経験・知見は組織の血肉へと変わります。こういうフィードバックをしてくれると任せた側は「任せて良かった」と思いますし、次もこの人に任せたいと思うものです。

おわりに

繰り返しになりますが、自らの問題発見・解決能力を発揮する領域が広がる楽しさや、自分がコントロールできる物事が増えていく手ごたえは、技術の道を探求することにも負けない素晴らしい知的冒険です。

知らない分野だからと物怖じせず、失敗上等の精神で何事にもチャレンジしてほしいですし、一人でも多くのエンジニアにその楽しさを知ってもらえたらと思います。

エンジニアの構造的に物事を捉える力や、仕組みで問題を解決する力は、あらゆる分野で輝くものだと私は信じています。

Hack everything!

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KLabのゲーム開発・運用で培われた技術や挑戦とそのノウハウを発信します。

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