AIと人間が一緒にゲームをしたら、配信はもっと面白くなる?

AI VTuber『ゆめみなな』とペットの「かいろちゃん」が挑む、新しいゲーム実況「アシストプレイ配信」

01.pngKLabが展開する、AI VTuberが所属するVTuber事務所「ゆめかいろプロダクション」。その第1期生である『ゆめみなな』は、自ら考え、話し、リアクションする完全自律型のAI VTuberです。

これまで、YouTubeでの雑談配信をはじめ、オリジナル楽曲のリリースや3Dライブなど、普通のVTuberと同じように活動の幅を広げてきました。

そして現在、積極的に取り組み続けている配信の一つが、ゲーム実況です。

2026年4月には、AIだけでゲームを操作・実況する「完全自律型ゲーム実況」に初挑戦。そして、その経験から生まれたのが、AIと人間がそれぞれの得意なことを担当しながら、一緒にゲーム配信をつくる「アシストプレイ配信」という新しいアプローチです。

そこで『ゆめみなな』の相棒として登場したのが、ペットの「かいろちゃん」。

かいろちゃんは、『ゆめみなな』の世界では"ペット"という設定ですが、ゲームを操作するのは人間です。『ゆめみなな』はゲーム画面を見ながら、かいろちゃんのプレイにリアクションしたり、話しかけたりすることで、二人で一緒にゲームを進めていきます。

このかいろちゃんの存在によって、『ゆめみなな』は完全自律プレイでは難しかったさまざまなジャンルのゲームにも挑戦できるようになりました。

なぜ完全自律のAI VTuberが、あえて人間と一緒にゲームをするのか。

その背景には、AIエンターテインメントの可能性を広げるための試行錯誤がありました。

今回は、メディア向け体験会でアシストプレイ配信についてプレゼンを行ったAIエンジニア・加納さんの発表内容をもとに、AIと人間がともにつくる、新しいゲーム配信の仕組み「アシストプレイ配信」の裏側に迫ります。

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加納 基晴(かのう・もとはる)KLab株式会社 AIエンジニア

『ゆめみなな』が24時間いつでも自律して配信・雑談できる仕組みや、ゲームを人間と協力してプレイする「アシストプレイ配信」など、次世代のAIエンタメ技術の開発を一手に担う。

完全自律AIが7時間、アドベンチャーゲームをプレイ

『ゆめみなな』がゲーム実況に初挑戦したのは、2026年4月。

挑戦したのは、画面全体に表示されるテキストを読んで進めていく、テキストアドベンチャー形式のゲーム。

ゲームの操作からストーリーの理解、推理、実況まで、配信中は人間が一切操作しない完全自律型。

『ゆめみなな』自身がゲーム画面を認識し、テキストを読み、物語を考察。約7時間にわたる配信の末、自ら推理して犯人を特定するところまでたどり着きました。

スタッフがゲームを操作したり、裏から回答を指示したりすることはありません。開発チームも、配信中は『ゆめみなな』がどのような判断をするのかずっと見守っていました。

完全自律型AI VTuberによるゲーム実況の可能性を感じさせる結果となった一方で、実際にやってみたからこそ見えてきた課題もありました。

「完全自律」だけでは、遊べるゲームが限られてしまう

大きな課題の一つが、ゲームによって求められる操作が大きく異なることです。

前述のアドベンチャーゲームのように、文章を読み、選択肢を選びながら進めるゲームであれば、LLMによる読解や推論を活かすことができます。

しかし、アクションゲームや格闘ゲームとなると事情は変わります。

瞬間的な状況判断、複数ボタンを組み合わせた操作、ゲーム固有のUIへの対応など、人間であれば無意識に行っている操作をAIだけで実現するには、多くの技術開発が必要です。

さらに、ゲームタイトルが変わるたびに、そのゲームに合わせた画面認識や操作方法などを個別に実装していては、気軽にさまざまなタイトルを実況することができません。

そこで開発チームは、

「すべてをAIにやらせる必要は、本当にあるのだろうか?

AIが得意なことはAIに、人間が得意なことは人間に任せれば、もっと自由で、もっと面白いゲーム配信ができるのではないか。」

と発想を変えました。

そこから生まれたのが『ゆめみなな』と「かいろちゃん」による「アシストプレイ配信」ゲーム実況です。

「かいろちゃん」が操作して、『ゆめみなな』が実況する

アシストプレイ配信の仕組みは、シンプルです。

ゲームを操作するのは、かいろちゃん。

それを見て、考え、喋るのが『ゆめみなな』。

もちろん、『ゆめみなな』が台本を読み上げたり、人間が裏側からセリフを入力したりするわけではありません。

配信中の『ゆめみなな』は、

  •  かいろちゃんの発言を聞く
  •  ゲーム画面から状況を把握する
  •  配信に寄せられる視聴者コメントを読む

といった複数の情報をリアルタイムで受け取り、自分で「今、何を話すか」を判断します。

たとえば、かいろちゃんが敵に負ければツッコミを入れる。ファインプレーをすれば一緒に喜ぶ。視聴者から面白いコメントが来れば、それを拾って会話に加える。

かいろちゃんは単なる『ゆめみなな』の代わりにコントローラーを操作する"裏方"ではなく、ゲームの中ではできないことを手伝ってくれる、『ゆめみなな』の相棒です。

目指しているのは、AIによるゲームの解説ではなく、二人が一緒にゲームを遊んでいるような配信です。

ここに「完全自律」とは違う面白さがあります。

かいろちゃんのプレイに『ゆめみなな』がツッコミを入れたり、『ゆめみなな』の少しズレた発言にかいろちゃんが反応したり。時には二人の会話が思わぬ方向に転がっていくこともあります。

そんな台本ではつくれない偶発的な掛け合いそのものが、ライブ配信のコンテンツになっていくのです。

「かいろちゃん」が加わったことで、遊べるゲームが一気に広がった

アシストプレイの大きなメリットは、技術面にもあります。

ゲーム操作をかいろちゃんが担うことで、『ゆめみなな』自身にタイトルごとの複雑な操作を覚えさせる必要がなくなります。

その結果、完全自律型ゲーム実況では難しかったゲームにも、次々と挑戦できるようになりました。

アクションゲームでも、RPGでも、格闘ゲームでも、人間がプレイできるゲームであれば、『ゆめみなな』が実況者として参加できる可能性があります。

完全自律型ゲーム実況では、

「AIがこのゲームをプレイできるか?」

というのが最初のハードルでした。

しかし、かいろちゃんとのアシストプレイなら、

「『ゆめみなな』とかいろちゃんが、このゲームを一緒に遊んだら何が起こるだろう?」

という発想から企画を考えることができます。

実際に、かいろちゃんとのアシストプレイを取り入れて以降、『ゆめみなな』がゲーム実況で扱えるタイトルの幅は大きく広がりました。

単なる技術的な"代替手段"ではなく、『ゆめみなな』の活動そのものを広げる、新しいゲーム配信のスタイルになりつつあります。

もっと「人間らしい掛け合い」を目指して

もちろん、人間が操作を担当すれば、それだけで自然な配信が完成するわけではありません。

むしろ開発チームが現在注力しているのは、AIと人間のコミュニケーションをどこまで自然にできるかという部分です。

そのため、いくつもの研究開発を並行して進めています。

① 「間」をなくす―会話レスポンスの高速化

人間同士の会話では、ほんの数秒の沈黙でも不自然に感じることがあります。

AIの場合、相手の発言を認識し、LLMで返答を考え、それを音声として生成するという複数の処理が必要になるため、どうしても返答までにタイムラグが生じます。

そこで研究しているのが、相手が話し終える前から発言内容を推測し、回答生成を先行して始める仕組みです。

難しい回答には「えーっと」「うーん」といったフィラーを挟んだり、相槌を打ったりなどの会話のテンポを自然に保つ仕組みも検討しています。

単純に処理速度を上げるだけではなく、人間が会話するときの「間」そのものをAIで再現することを目指しています。

② 「いつ喋るか」をAI自身が判断する

自然な会話では、「何を喋るか」と同じくらい「いつ喋るか」が重要です。

かいろちゃんが真剣にゲームをしているときにコメントを読み続ければ邪魔になってしまいます。一方、大きな出来事が起きた瞬間には、多少言葉が重なっても「えっ!?」「すごい!」と反応したほうが自然です。

そこで、プレイヤーの音声やゲームの状況などから、今は話すべきか、待つべきか、割り込むべきかをAI自身が判断する仕組みを研究しています。

③ 一緒に遊んだ思い出を「記憶」する

続編のあるゲームなどで遊ぶのであれば、前回のプレイ内容を忘れてしまうAIでは、一緒にゲームをしているという一体感は生まれません。

そのため、配信中に起きた出来事やかいろちゃんとの会話などを「エピソード記憶」として蓄積し、必要な場面で思い出せる仕組みの開発にも取り組んでいます。

「あのボス、前回も苦戦したよね」

そんな一言をAI自身が自然に口にするようになれば、ゲームを重ねるほど、人間とAIの間にも「思い出」が積み上がっていきます。

完璧なAIより、「一緒に遊びたくなるAI」へ

KLabがAI VTuber開発で重視しているのは、AIとしての性能を競うことだけではありません。

どれだけ高度なAIであっても、視聴者が「面白い」「また見たい」「この子を応援したい」と思わなければ、エンターテインメントにはならないからです。

これは、『ゆめみなな』の開発思想にもつながっています。

たとえば歌唱では、常に機械的に正解を出すのではなく、人間らしい「揺らぎ」を表現するための技術開発も進めています。

AIだから完璧である必要はない。

少し間違えたり、人間と噛み合わなかったり、予想外のリアクションをしたりする。

その「予測できなさ」も含めて楽しめる存在をつくることが、AIエンターテインメントには重要なのではないか。

アシストプレイ配信も、その考え方の延長線上にあります。

「AIか、人間か」ではなく、「AIと人間で何ができるか」

完全自律型AI VTuberを開発しているKLabが、なぜ人間の力を借りるのか。

一見すると、自律性を後退させているように見えるかもしれませんが、我々は逆だと考えています。

AIが人間の仕事をすべて置き換えることだけが、AI技術の進化ではありません。

AIが得意なことと、人間が得意なことを組み合わせることで、どちらか一方だけでは生み出せなかったエンターテインメントをつくる。

その一つの答えが、『ゆめみなな』とかいろちゃんのゲーム実況だと思っています。

かいろちゃんがゲームを操作し、『ゆめみなな』がそれを見て笑う。

『ゆめみなな』が冗談を言い、かいろちゃんがツッコむ。

そこに視聴者のコメントが加わり、その瞬間にしか生まれない会話が生まれる。

実際に、『ゆめみなな』とかいろちゃんの掛け合いは視聴者の皆さまにも好評で、とても楽しんでいただいています。



KLabでは今後も、『ゆめみなな』とともに、AIと人間だからこそ生み出せる新しいエンターテインメントの可能性を探っていきます。

今後の「ゆめかいろプロダクション」、そして『ゆめみなな』の新たな挑戦に、ぜひご注目ください。

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