【社員インタビュー】クリエイターに話を聞いてみた!グラフィックスエンジニア編〜未来のゲームに役に立つ取り組みも!?〜

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ゲーム体験において、目覚ましい進化を遂げたグラフィックス。モバイルオンラインゲームにおいても、コンソールゲームに負けないくらいリッチなグラフィックスも登場しています。

KLabでは、新しい技術を取り入れるため、日頃から研究開発をおこなっています。世界的にも有名なデモシーンのイベント(デモパーティ)である「Tokyo Demo Fest」と「Revision」に参加し、それぞれで優勝した経験もあります!
今回は、そんな「Revision」でも活躍し、グラフィックスエンジニアとして活躍する細田 翔さんにインタビュー!

細田さんにグラフィックスエンジニアとしての活動や、その道を目指すことになったきっかけについて聞いてみました!

細田 翔:グラフィックスエンジニア
KLabの在籍年数は7年。新卒でサーバーサイドエンジニアとして入社したが、同期のグラフィックスエンジニアから刺激を受け、3Dグラフィックスを独学で学び、3DCGグループへ異動。現在は、レンダリングパイプラインの設計、モバイル向けに最適化したシェーダーの開発のほか、テクニカルアーティストとしても活躍。

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クリエイターの技術支援の他に、未来のゲーム作りも行う!?

――細田さんは元々サーバーサイドエンジニアだったと聞きましたが、グラフィックスに興味を持ったきっかけは何だったのですか。

実は同期の影響なんです。同期に、グラフィックスやシェーダーにすごく詳しい人がいて、彼の影響もあって、シェーダー共有サイトのShadertoyを見るようになったのがきっかけですね。
*「Shadertoy」は、ブラウザ上でリアルタイムシェーダーを構築したり、作品を共有することもできるサービス

驚くほど短いコードで複雑な形状をレンダリングしたり、負荷の高い高度なレンダリングを最適化してリアルタイムに実行できるようにした作品が公開されていました。最初は「なんでこんなことができるんだ」と、興味もって独学で調べたり、研究するようになりました。


――シェーダー技術に興味をもたれたのですね。サーバーサイドエンジニアから、グラフィックスエンジニアへ部署異動されたのは、いつからでしょうか?

業務上グラフィックスエンジニアとして担当することになったのは、入社2年目の頃です。KLab社内では、チャットやメールなどを使って日頃から活発に情報交換する場があるのですが、そこで自分のやったことや調べた内容、シェーダーで作ってみたものなどをシェアしていたんです。

その結果、社内でも"シェーダーができる人"と知られるようになり、新しいプロジェクトが立ち上がった時に「グラフィックスをやりたい」と上長に相談したところOKが出まして、グラフィックスエンジニアとして業務に携わるようになりました。


――独学で研究していたことが、仕事でも新しいチャンスにつながったのですね。グラフィックスエンジニアとは、具体的にどういう仕事をされているのですか。

現在は、エンジニアリング本部のRRR(リアルタイム・レンダリング・リサーチ)グループでグラフィックスエンジニア、クリエイティブ部でテクニカルアーティスト、と2つの部署で役割を兼任しています。
現在のゲーム開発はUnityでおこなわれていますが「Unityの標準機能では表現できない」部分があります。そのような課題を解決するのが、私の仕事です。

例えば、キャラクターたちがステージ上で踊る場面でスモークの演出をすることがありますが、これをUnityの標準機能で実現するには限界があります。そこで、専用のシェーダーを用意して、軽量化することで開発の負担を下げたり、より自然なスモークの演出を表現をできるようにするのです。(この件については、CEDEC+KYUSHUで発表

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▲CEDEC+KYUSHU発表資料より

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▲CEDEC+KYUSHU発表資料より


他にも、大量の蝶の羽ばたきをUnityの通常のアニメーションで行うと負荷の問題で現実的ではありませんが、頂点シェーダーで羽ばたきのアニメーションを実装することで負荷の問題を解決しました。

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▲CEDEC+KYUSHU発表資料より

私自身は、シェーダーに特化している部分もありますが、クリエイターの人と相談しながら負荷対策と表現力の向上を両立できるようにしていくのが主な仕事になります。

詳細は技術ブログでもご紹介しています。合わせてご覧ください。
「CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE 「シェーダーを活用した3Dライブ演出のアップデート ​」登壇報告
https://www.klab.com/jp/blog/tech/2021/cedec-kyushu-2021-online-3d.html


――なるほど。それでは、社内で相談を受けることも多いポジションなんですね。

はい。他部署との相談や連携は欠かせません。
これまでの繰り返しではなく、新しい技術を活用していくことも、会社としては大事なので、実装の前段階として先行して研究し、社内で定期的に発表しています。RRRグループでは、研究発表だけでなくデモの制作もおこないます。

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KLab RRRグループの取り組みの成果はArtStationでもご紹介しています


――報告会ではどのように発表するのですか。

各々が短いムービーを作ったり、資料を作成したり、自由に発表します。以前は、広いマップのオープンワールドのような作品を発表した人もいましたし、服を折り畳んだ際の動きや表現といった細かい描写を発表した人もいます。
発表した研究内容は、次のステップとして、実際にゲーム作品に落とし込めるように、更に実用化へ向けて研究を進めていきます。


――なるほど。新しい技術は魅力的ではありますが、未知の分野の研究は大変なことも多いのではないでしょうか。

そうかも知れないですね。でも、結構好きでやっている人が多いのかなぁと思います(笑)。私もグラフィックスに興味を持ったきっかけが「これはどうなっているんだろう」という新しい技術に対しての好奇心だったりします。そういった新しい技術に対して前向きな(好奇心をもっている)人が多い分野なのかなと思いますね。


――細田さんが今、好奇心を寄せている研究分野は何ですか。

レイトレーシングという技術に注目しています。ここ2~3年の間に注目されるようになってきた技術で、反射や屈折などの光の振る舞いをシミュレーションすることで、3Dモデルの描画のされ方を、より正確に表現することができる手法です。レイトレーシングそのものは、もっと以前からあるもので、私自身は社会人になった2015年頃から気になっていた技術のひとつで、当時から「レイトレ好きコミュニティ」に参加していました。


――レイトレーシングは、どういった技術なのでしょうか。ゲーム開発においては、どのように活用されるのでしょうか。

レイトレーシングを活用すると、大域照明を考慮したより写実的な表現や光の反射や屈折を活用した演出が可能になります。

光の反射というと、皆さん直線的なイメージを持っているかと思いますが、反射する面の表面は細かく見ると凹凸があり、実際は様々な方向に反射しています。これを再現するのは、かなり難しいことなのですが、レイトレーシングの技術では、その反射をシミュレーションし、確率的に収束させて再現します。
そうすることで、写実的な表現や複数回の反射を行わせた合わせ鏡のような表現を実現するのです。

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▲合わせ鏡の例、左がレイトレーシングOFF、右がレイトレーシングONの状態。
従来のSSR(ScreenSpace Reflection、スクリーンスペースの反射)では、描画結果の中から反射に対応するピクセルを集めているため、3Dモデルの「後ろ姿」が反射して映り込むようなケースでは結果が破綻していた。

レイトレーシングの活用については、技術ブログでも詳しくご紹介しております。ぜひご覧ください。
リアルタイムレイトレーシングを先取り!Unityのpreview機能で次世代のグラフィックを使ってみよう
https://www.klab.com/jp/blog/tech/2022/unity-ray-tracing.html


また、レイトレーシングの活用は、クリエイターのワークフローをも改善する可能性があるかなと思います。
例えば、従来はライティングを事前計算する必要がありましたが、その事前計算がなくなることで、アーティストの作業をもっと楽にすることができるのです。


――新しい技術は夢が広がりますね。

そうですね。現段階の課題は、ハイクオリティなものは出せるけど、時間がかかるというところです。映画などのオフラインレンダリングでは既に実用化されていますが、リアルタイムで描写されるゲームでは、まだPCゲームでないと実用化が難しい段階です。
日々新しいツールも登場して、注目度もグッと高まっていますので、モバイルオンラインゲームでも実用化できる未来もくるはずでしょうね。

実際の作品に実装するのは未来の話になるかもしれませんが、近い将来に役立つ技術、ゲーム開発でのスタンダードになりそうな技術を研究していくのは、グラフィックスエンジニアやテクニカルアーティストの仕事と言えると思います。

新しい技術を発信し、日本のグラフィックス技術をリードしていきたい。

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――細田さんは外部のイベントで登壇、発表する機会も多いようですが、どういった経緯で登壇されることになったのでしょうか。

自分が取り組んできたこと、研究したことを整理して発表する機会として、参加しています。発表内容に注目していただいたり、受賞するようになって、登壇のお声がけをいただく機会も増えました。
自分の研究が他の人の役に立てたら良いなと思います。技術のシェアと言いますか、同じような問題に悩んでいる人の手助けになれたら嬉しいですよね。

デモパーティでは発表内容が順位付けされますので、力試しをする場になっているところもありますし、エントリーの締切があることで緊張感をもたせたり、メリハリをつけられる点は、発表の場に参加するメリットだと思います。

また、参加者の発表や、他の人の作品を見ることは刺激になります。「これ、どうやっているんだろう」といった驚きが毎回あって、参加者同士で刺激を受け合う機会になっています。


――独学で学び、グラフィックスエンジニアになるチャンスをみずから掴んだ細田さんですが、これからグラフィックスエンジニアを目指す人にアドバイスをお願いします。何をすればよいでしょうか。

学校で学んだことが活きるということがお伝えできそうです。グラフィックスエンジニアにとって、数学はかなり重要になるかなと思います。大学一年生で学ぶような「線形代数」や「解析学」などは活用することが多いですね。

例えば、3Dモデルをレンダリングするためには、3Dのモデルを2Dのスクリーンに投影するような座標変換が必要で「線形代数」や「行列」などを使います。経験からすると、大学一年生で学ぶことが大事かなと感じています。知識はなくとも、制作することはできるのですが、基礎的な知識は役立ちますよ。

以前、Twitterで「100の職業で利用する数学(数学を活用している職業は何か)」というのが話題になったことがありますが、その結果ではグラフィックスは数学のオールジャンルを活用するとありましたからね(笑)。


――学生の時に学んだ数学の基礎知識が活かせるのですね!ほかにもありますか。

コミュニティに参加していくことも大事だと思います。私も独学と言えば独学ですが、Twitterなどのツールは利用しています。コミュニティやイベントに参加していくことで、知識もどんどんついてくると思います。
デモパーティなどは誰でも参加することができます。

最初は、自分なんてと躊躇する人も多いかと思いますが、思い切って参加してみると結果的にプラスになるはずです。その分野で詳しい人と仲良くなるきっかけになり、交流することで自分も詳しくなっていきます。そのような場で会った人、知った人のTwitterアカウントをチェックすることで、刺激にもなっていますね。

私の場合は、きっかけになった同期との出会いや、KLab社内の環境なども学んでいく上で恵まれていたと思います。グラフィックスエンジニアになりたての2018年に東京で開催されたイベントには、KLabから10人以上のエンジニアが参加したり、積極的に活動をおこなっていた時期でもありました。

また、先ほど話したメーリングリストやSlackなど社内のコミュニティツールでは、日々活発に情報共有がおこなわれています。KLabには技術に興味ある人、そういった取り組みを楽しめる人が多いのだなと思います。

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――細田さんの今後の目標は何ですか。

引き続きグラフィックスの技術を学び、会社全体の技術力の底上げに貢献したいです。
グラフィックス分野の進化のスピードは著しいので、日々キャッチアップして、研究開発につなげていきたいです。
あとは、グラフィックスプログラミングに興味を持つ人を増やしていきたいですね。


――なるほど、後輩の育成といったものでしょうか。

はい、そうですね。グラフィックスエンジニアはまだまだ人数が少なく、ゲーム業界全体としても育成していくことが課題だと感じています。グラフィックスに関する論文は、欧米での研究成果が多く、日本はまだまだ少ない状況です。もっと日本からの発信が増え、成果も出てくるようになれば良いなと思います。
私自身も、発表の場にはどんどん参加していきたいですね。

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――それでは、最後にKLabに興味のある人に向けてもメッセージをお願いします。

前出のとおり、KLabでは技術者が学ぶ環境があります。
日々情報交換を積極的に行う環境があり、デモパーティなどの技術イベントにもスポンサー協賛をしたりと、技術者の活動支援も積極的におこなっています。

私が外部で登壇する際には、発表内容の準備やスケジュールの調整、上長などからのアドバイスやフォローも受けることもできるんですよ。そのようなバックアップ体制や、技術者が自分のやりたい活動に専念できる体制が整っているところが、KLabのすごく良いところだと思います。

ですから、新しい技術を研究し、その技術でよりゲームの表現力を良くしたいと思っている人や、新しい技術に対して前向きな人には良い環境だと思いますので、もし興味を持っていただいたなら、ぜひ一度話をしてみたいですね。



――ありがとうございました!


新しい技術が好きで、それが役立つように広めたいと語る細田さん。KLabのTechブログでも積極的にトピックスを発信しています。

細田が執筆した技術ブログ記事はこちら

細田さんのようなグラフィックスエンジニアの方々が、垣根を越えて活動していることがゲームの進歩を支えているのですね!
ブログでは、細田さんのほか、様々な場面で活躍する社員を紹介していきますので、楽しみにしてください!


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