KLabGames Creative Blogでは、これまでにもクリエイティブに関する記事を紹介してきましたが、今回、そこに「UI通信」というコーナーを新設していただいたので、月に一回程度、UI/UXについて書いていこうと思います。KLabには様々なプロジェクトがあり、その中で、100名近いUIデザイナーがいます。UI/UXと言っても、仕事の内容は人によって得意分野も異なり、ワイヤーが引けるデザイナー、画面デザインに特化した人、訴求の制作に特化した人、UX寄りの人、様々です。そこで我々が、どんな仕事をしているのかを紹介していけたらと思います。
今回は初回ということなので、まず、どうやったらUI/UXデザイナーになれるのって話をします。紹介が遅れました。UI通信の第一回を担当させていただきます。UI/UXディレクターのCOOMAと申します。
よくUIって画面のデザインする人でしょ?とかUXって何をする人なの?っていう質問をされます。クリエイターを目指す人は、やはり、広告でドーンと利用されるようなイラストや3Dアーティストになりたいという人が多い。どうしたって、私、ボタンのデザインをしたい!枠をデザインしたりしたい!なんて思わない。UXなんて、なにを作ってるの?思想家?って思ってる人もいたりして。
UIデザイナーやUXデザイナーの人は、もともとは別の職種だった人が多いようです。イラストをしていてUIデザイナーになった人、開発をしていてUXデザイナーになった人。なりたい人が少ない要因は、まずどうやってなるのか?なにをしているのか?これがうまく伝わっていないせいかもしれません。
でも、UIやUXのお仕事は実に奥が深く、ゲーム全体について関われるとも言えます。もし、UIやUXの人たちが、何を考え、どんな仕事しているのか、その現場を、あまり知らない人が見たら、なんて楽しそうなんだろう、憧れちゃう!みたいになるに違いありません。なぜなら、私も憧れちゃった一人だからです。
UIデザイナーは画面の意匠デザインをする人と思っている人が多いようです。しかし、UIデザイナーの中にはデザイン学校に行かなかった人もたくさんいます。webデザインのコーディングをやっていて、そのままUIデザイナーになった人もいます。デザインは他の人にやってもらったらいいからです。それよりも、どんなふうにレイアウトし、情報をどう整理するかの方が大切だったりします。
或いは、文字が大好きでUIデザイナーになった人もいます。フォントについて研究していて、訴求バナーなどを作っているうちに、ロゴ作りの面白さに目覚め、情報をどう伝えるのか興味が出て、そのままUIデザイナーになったケース。ソーシャルゲームの現場では、週に1つのタイトルで多い時には数百枚もの訴求バナーを作ります。そこではロゴなど、情報をどう見せるかで売り上げが変わります。イラストとはまた違う刺激的な面白さがそこにはあります。
UXではさらに、広い視点が必要とされます。すぐにUXデザイナーになるというより、UIデザイナーからUXデザイナーになってゆくケースが多いようです。UIデザイナーはプログラマー、企画の人、あるいはマーケティングの人と広告戦略についてもやりとりすることも多くなります。そのため、ゲームを企画から開発、ユーザーにどのように届けられ、どう売り上がるのかまでを通して考えることができるようになるので、ユーザーがどんなふうに遊ぶのかというところまで意識して、UIを考えることができるようになります。
人によっては、制作進行管理からUXデザイナーになる人もいます。チームをスケジューリングしながら、プロジェクト全体を俯瞰し、チームをドライブし、いかに、制作物のクオリティを上げてゆくかを考えることで、UXの考え方に近づいて行くわけです。
人によって着地の仕方はそれぞれのようです。そして、一口にUIとかUXと言っても、やっていることはその人の得意によって実に様々です。
私の場合はさらに特殊な例と言えると思います。なぜなら初めから「UXデザイナー」になりたかったからです。40年以上前からです。本当なんです。しかし、当時はUXという言葉すらありませんでした。小学生の文集の夢に「体験を作る人」と書いていたくらいです。
なぜ、そんなことを書いたのか。当時、インベーダーゲームが登場し、ゲームという新しい体験が生まれました。そして、私は販売されたばかりのファミコンを熱烈に所望しました。しかし、ある日家に帰ると、机の上に、巨大なパソコンが置いてありました。そのせいで、ゲームを遊ぶことはできずに、人の遊んでいる姿をゲームセンターで見るか、自分で絵を描いてプログラムして、ゲームを作るしかありませんでした。でも、ひとつ、言えることは、とにかく人が驚いたり、感動したり、楽しそうにしているのを見るのが好きだったのです。当時ゲームを作る人という職業は一般的ではなく、「体験を作る人」と書いたのです。
結局、プログラムか絵かで迷った挙句、芸大に進学しました。しかし、途中で、絵が描きたいわけではなく「楽しい」をやりたいんだ!となり、なぜか「楽しい」という心を分析しようとして、心理学に没頭していってしまいました。その後も「体験を作る」という職業を追い求め、舞台の演出や舞台美術の仕事をしたり、広告のデザイナーをしたり、企画を作ったり、目標はあったのですが、体験そのものを作らせてくれるものがなく、軸を定めきれない状態は続きました。
2003年、DocomoがモバイルでFLASHを採用すると発表し衝撃が走りました。一人で、企画して、開発して、演出もデザインをしてゲームが作れる!これだ!私は全てを投げ捨て、携帯業界に飛び込みました。しかし、それもつかの間、ゲームは巨大化し、一人で作ることができないようになっていきました。チームも3人から、5人、10人、50人、100人。分業化が進んでいってしまいました。
そんな折、海外ではUXという考え方がものつくりの主流になっていました。「体験をデザインする」というこの考え方は、まさに、私の考えてきた、体験そのものをつくるお仕事でした。私はまっさきに手を挙げました。理解はなかなか得られませんでしたが、UX的視点で提案し、UIや企画、あるいは業務フロー改善に反映させていきました。そして、それは、今まで、バラバラに取り組んできた、デザイン、開発、企画、演出、心理学、全ての経験を同時に活かすことができるものだったのです。
そして、いつの間にかUXデザイナーという肩書きをもらえるようになっていました。今でもどうやったらUXデザイナーになれますか?という質問をもらったりします。おそらく、それは人それぞれではないかと思います。UXのセミナーに参加すると、野菜を作っている人が、UXデザイナーと名乗っていたことがありました。本当に奥が深い仕事です。私もいつか、社内で花に水をあげながら、UXをしていると主張する日が来るかもしれません。
そんなわけで、このUI通信では、現場で、UIやUXの人が、実際にどんな問題に直面し、それをどう解決していっているのか、実際の仕事の現場について紹介していこうと思います。一人でも多くの人が、UIやUXの仕事の面白さを感じて、こんな仕事がしたいなと感じてくれたらと思います。
また、同業の人にも、共感していただき、それについて詳しく知りたいということがあれば、お気軽に声をかけていただければと思います。KLabでは社外向けの勉強会なども開催しているので、そこでも取り上げていきたいなと考えています。
KLabのクリエイターがゲームを制作・運営で培った技術やノウハウを発信します。
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